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広島高等裁判所岡山支部 昭和52年(ラ)13号 決定

抗告人 山田良子(仮名)

主文

原審判を取り消し、本件を岡山家庭裁判所に差戻す。

一  本件抗告の趣旨及び理由は別紙抗告申立書〈省略〉記載のとおりである。

二  よつて検討するに、遺贈による不動産の取得登記は、それが特定遺贈であれ、包括遺贈であれ、判決による場合を除き、登記権利者たる受遺者と登記義務者たる相続人又は遺言執行者との共同申請によるべきであると解するを相当とするところ、本件記録によれば、抗告人は本件遺言者亡山田たつ代から同人の動産、不動産を含む遺産の全部の遺贈を受けた者であるが、右遺言者には相続人がないことが認められるので、なるほど、かかる場合においては遺贈の効力が発生するとともに、全遺産は受遺者に移転するから、その限りにおいては遺言の執行という観念を容れる余地がないけれども、遺贈による不動産の取得登記義務の履行の点においては、遺言の執行を必要とするものというべきであるから、遺言執行者の指定のない本件においては、遺言執行者を選任して右義務の履行にあたらせるべきものである。

三  してみれば、遺言執行者を選任する必要がないとして本件申立を却下した原審判は不当であつて、取消を免れず、本件を原審に差戻すのが相当であるから、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 加藤宏 判事 喜多村治雄 篠森眞之)

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